no pat answer, no grapevine

一見正しそうなことや噂になんか流されない。

『21世紀の資本』を4段落でまとめてみると

はじめに 

 ピケティの『21世紀の資本』が2015年の世界を賑わせた。ページ数が膨大であるにも関わらず、ベストセラーになった。そのうえ、同年12月には同氏の師匠にあたるアトキンソンによる『21世紀の不平等』が翻訳され、話題となっている。

 やや遅ればせながらではあるが、これを機に、(『21世紀の資本』自体を読破することは諦めて)要約されたものを探してみた。すると、4段落(実質的には1段落)で同書をまとめたエコノミスト誌のブログ記事をたまたま発見したので、この記事を大雑把に和訳したものを掲載することにしてみた。訳にあたっては、定訳や翻訳書を特に参考としておらず、不十分な点があると思われる。この点については、何なりとコメントをいただきたい。

 

トマス・ピケティの「資本」、4段落で要約

出典:http://www.economist.com/blogs/economist-explains/2014/05/economist-explains

 

 これは世界を心酔させた経済書である。フランス人経済学者トマス・ピケティによる『21世紀の資本』は、フランス語で昨年出版され、今年3月には英語版が出版された。英語版は瞬く間に類を見ないベストセラーとなり、主題であるところのグローバルな不平等に対する見方について広範かつ積極的な議論を駆り立てた。本書を先駆者とみなしたり、本書そのものが分配の問題へと経済政策の焦点を力強くシフトさせると考える者もいる。本誌はピケティ氏を「現代のマルクス」として認めてきた。しかし、それはどういうことであろうか。

 本書は、ピケティ氏および少数のその他の経済学者による、所得と富の集積に関する歴史的変化を詳細に調べた10年以上にわたる研究に基礎づけられている。この大量のデータは、産業革命以降における不平等の進展を描写することをピケティ氏に可能ならしめる。18世紀や19世紀における西ヨーロッパ社会は非常に不平等であった。個人に属する財産は国家の収入を妨げるとともに、比較的厳格な階級構造における最上位に君臨する一部の豊かな一族の手に集中していた。工業化がわずかながら労働者の賃金上昇に寄与していたときであっても、このシステムは持続していた。第一次世界大戦第二次世界大戦および世界恐慌といった混沌だけがこのパターンを中断させた。高い税率、インフレーション、倒産そして福祉国家の無秩序な台頭が、富を劇的に収縮させるとともに、収入と富が比較的平等主義的なかたちで配分される時代へと誘った。しかし、20世紀初頭のショックで後退し、富が再び目立つようになってきている。さまざまな手段を用いて、ピケティ氏は、現代経済における富の重要性は、第一次世界大戦前のレベルにまで近づいていると考えている。

 このような歴史から、ピケティ氏は資本および不平等に関する基本理論を導き出す。一般則として、富は経済成長よりも伸びが大きく、彼はこの概念をr>gと定式化する(rは富のリターン比率、gは経済成長率)。他の要素を一定とみなすならば、高い経済成長は社会における富の重要性を失わしめる一方、低い経済成長はそれを増大させる(そのうえ、世界的な成長を減速させる人口動態の変化は資本をより独占的にする)。しかし、継続した富の集中に対して反発する自然力は存在しない。(技術進歩あるいは人口の増加による)急激な成長爆発あるいは政府の介入が、カール・マルクスが懸念した「世襲主義的資本主義」に経済が回帰することを阻むことが期待される。ピケティ氏は以下のように本を締めくくる。政府は、富に関するグローバルな税を導入することによって、将来(down the road)生じうる経済あるいは政治的な不安定に結び付く急拡大する不平等を回避すべく、ただちに介入することを推奨する、と。

 本書は予想通り多くの批判を湧き起こした。ある者は、ピケティ氏が、将来は過去のようになると考えることが的を射ているか訝しむ。富が増えれば増えるほど、高いリターン比率で稼ぐことは難しくなるとの主張もある。また、今日のスーパリッチといわれる層の大半は、その富を相続ではなく事業によって獲得している。別の者は、ピケティ氏の政策提言は経済的というよりはイデオロギーに基づいており、有害無益であるとさえ主張する。しかし、それにもかかわらず、多くの懐疑論者は、データや分析の面において、本書の貢献に優しい言葉をかけている。ピケティ氏が政策を変更させるのに成功するか否かにかかわりなく、何千もの読者や多くの経済学者がこういった問題を考えるにあたって影響をもたらすであろう。