no pat answer, no grapevine

一見正しそうなことや噂になんか流されない。

京都の客室稼働率について考えてみる。

 全国有数の観光地である京都市における客室稼働率京都市観光協会が公表)は、2019年に平均8割程度だったのが、2020~2021年は同約3割、2022年(1~8月平均)は同約4割と低い水準が続いています(図1)。なお、まだ支援策等が明らかではなかったと考えられる8月時点における予測値によると、9月は51.8%、10月は42.7%、11月は49.8%と大幅な増加見通しにはなっていません。

図1:客室稼働率の推移(出所:京都市観光協会

 今月スタートする全国旅行支援や入国制限緩和により、賑わいが戻ることを期待しますが、2年以上も低い宿泊稼働が続くなかで、インバウンド需要などを見越して急増したとされる宿泊施設の供給動向も気になるところです。

 そこで、京都市のホームページに旅館業法に基づく許可施設数の推移というデータ(8月末時点)が掲載されていたので、これをグラフ化してみました(図2)。旅館・ホテルは、コロナ後であっても増加を続けてきましたが、2022年度は減少に転じる可能性があります。また、簡易宿所は、2019年度をピークに減少が続いており、2022年度も減少を続ける可能性があります。

図2:許可施設数の推移(左:旅館・ホテル、右:簡易宿所)(出所:京都市

 つぎに、客室数でみるとどうなるでしょうか(図3)。意外なことに、総客室数はコロナ後も増加を続けています。2022年度については、京都市観光協会の推計で58,003室(8月末)と、コロナで減少に転じたとは言い難い状況にあります。

図3:総客室数の推移(出所:京都市

 このように、京都市内における宿泊施設の供給量は、旅行需要がピークであったと考えられる2019年対比で増加しています。これは、単純に考えると、コロナ前以上の旅行需要を京都に取り込む必要があるといえます。外国人観光客の受け入れ増加という目標が達成されることを前提とすれば、全体のパイとしては供給過剰とはならないかもしれません。しかしながら、これまでの経営体力の消耗に加えて、人手不足、各種コスト高など厳しい外部環境を踏まえると、京都市内の宿泊施設市場は新たな生き残り局面を迎えているのではないかと考えられます。