要因分解の考え方
各種白書や経済レポートを読んでいると,要因分解グラフをしばしばみかける。
例えば,実質GDPを名目GDPとインフレ率に要因分解した式を考えてみよう。
名目GDPは,「名目GDP = 実質GDP ×インフレ率」と分解できるところ,
と,足し算のかたちで要因分解しているグラフを見たことないだろうか。なぜそうなるのか式を変形して考察してみよう。
例えば,年における,計数がとを乗じたものであると仮定すると,その前年差は,
と表される。
とそれぞれの前年差を括りだすイメージで項を追加するというアイデアが必要となるが,上の式を,
のように変形する。
すなわち,新しい項を加減することで前年差を作っている。
このとき前年比は,
と表される。
ここで,がに近似すると仮定すると,
Zの変化≒Xの変化+Yの変化
と表現することができる。言い換えると,が1に近似しないときはこれが成り立たない。
つぎに,が割り算であらわされている場合,例えばのような場合には,足し算の反対である引き算で表されることになる。
このことを念のために式で確認すると,掛け算の場合に出てきた前年差の式である,
について,をに置き換えて考えると,
右辺の第1項はと表され,第2項は と負の符号が出てくる。
これが,割り算の要因分解は引き算で表される理由である。
では次に,ある数字が足し算と引き算からなる場合を考えてみよう。
例えば,賃金を考えてみよう。一般労働者とパート労働者からなるとすると,
(労働者の賃金)
=一般労働者数×一般労働者の平均賃金
+パート労働者数×パート労働者の平均賃金
と表すことができる。
これは掛け算と足し算が混合した式であり,足し算の部分が新しい話である。
この点を強調するために,
(一般労働者数)×(一般労働者の平均賃金)=(一般労働者賃金)
(パート労働者数)×(パート労働者の平均賃金)=(パート労働者賃金)
とすると,
労働者の賃金は
(労働者の賃金)=(一般労働者賃金)+(パート労働者賃金)
とまとめることができる。
この要因分解を考えてみよう。
のとき,前年比をとで要因分解するには,寄与度の考え方と同じように,
と
(各要因の前年比)×(各要因の全体に占める割合)
というかたちで表現できる。
今回のまとめ
掛け算(割り算)の要因分解・・・
足し算(引き算)の要因分解・・・