最近の京都の客室稼働率
全国有数の観光地である京都市の客室稼働率(京都市観光協会が公表)について、昨年10月の記事で分析と考察を行いました。その後、全国旅行支援の開始や入国制限の緩和といったプラス材料が客室稼働率にどのような影響を与えているのか、今回はみていきたいと思います。
図1は京都市観光協会が公表する京都市の客室稼働率です。これをみると、2022年10~12月については、全国旅行支援の開始や入国制限の緩和により、稼働率が大幅に上昇しました。京都市観光協会が2022年10月末に公表した予測値が、10月:52.2%、11月:65.6%、12月:42.8%であったことを踏まえると、この時期は想定以上に活況であったといえそうです。
一方、2023年1~3月については慎重な見通しとなっています。京都市観光協会が公表している予測値(2023年1月末時点。図1の薄い線の部分。)によると、2022年の同時期対比ではプラスであるものの、2019年の水準を下回っています。1~2月については、季節的な要因や春節の影響が強めに織り込まれている可能性が考えられます。3月は、春の観光シーズンへの期待からか、2022年12月なみの水準を見込んでいます。活況が戻り、実績値が予測値を上回ることを期待したいところです。
当面の宿泊需要を考えるにあたっては、国内での需要喚起策に加えて、外国人観光客の動向も検討から外せないでしょう。図2は、日本政府観光局(JNTO)が公表している訪日外客数の推移です(執筆時点で2022年11~12月については推計値のみ公表)。これをみますと、入国制限が緩和されたとはいえ、2019年の数分の一程度の入国者数にとどまっています。
この背景としては、中国からの入国者数が低位にとどまっている(2019年:約959万人、2022年:18万人)ことがあります。将来的には入国制限が撤廃され、中国からの入国者数が増加すると考えられますが、コロナ前の水準にいつ復するかを見通すのは容易ではありません。
こうした状況を踏まえると、供給サイドとしては、「数に頼らない経営」が必要といえます。その際、原材料費や人件費のコスト増を価格に転嫁しつつ、適切なマージンを設定のうえ、新たな需要を取り込む努力も重要ではないでしょうか。最近、アフターコロナの旅行スタイルとして「アドベンチャートラベル」という形態が注目されているとのことです(JNTOの紹介ページはこちら)。こうした旅行スタイルは長期滞在型かつ旅行単価が高く、客数の減少を単価によってカバーする一手法として検討に値するかもしれません。
京都の客室稼働率について考えてみる。
全国有数の観光地である京都市における客室稼働率(京都市観光協会が公表)は、2019年に平均8割程度だったのが、2020~2021年は同約3割、2022年(1~8月平均)は同約4割と低い水準が続いています(図1)。なお、まだ支援策等が明らかではなかったと考えられる8月時点における予測値によると、9月は51.8%、10月は42.7%、11月は49.8%と大幅な増加見通しにはなっていません。
今月スタートする全国旅行支援や入国制限緩和により、賑わいが戻ることを期待しますが、2年以上も低い宿泊稼働が続くなかで、インバウンド需要などを見越して急増したとされる宿泊施設の供給動向も気になるところです。
そこで、京都市のホームページに旅館業法に基づく許可施設数の推移というデータ(8月末時点)が掲載されていたので、これをグラフ化してみました(図2)。旅館・ホテルは、コロナ後であっても増加を続けてきましたが、2022年度は減少に転じる可能性があります。また、簡易宿所は、2019年度をピークに減少が続いており、2022年度も減少を続ける可能性があります。
つぎに、客室数でみるとどうなるでしょうか(図3)。意外なことに、総客室数はコロナ後も増加を続けています。2022年度については、京都市観光協会の推計で58,003室(8月末)と、コロナで減少に転じたとは言い難い状況にあります。
このように、京都市内における宿泊施設の供給量は、旅行需要がピークであったと考えられる2019年対比で増加しています。これは、単純に考えると、コロナ前以上の旅行需要を京都に取り込む必要があるといえます。外国人観光客の受け入れ増加という目標が達成されることを前提とすれば、全体のパイとしては供給過剰とはならないかもしれません。しかしながら、これまでの経営体力の消耗に加えて、人手不足、各種コスト高など厳しい外部環境を踏まえると、京都市内の宿泊施設市場は新たな生き残り局面を迎えているのではないかと考えられます。
果たしてテレワークは進んでいるのか?
テレワークの推進が日本企業には求められています。しかしながら,2回目の緊急事態宣言下にあるというのに,通勤する姿がまったく消えたとはいえない状況にあります。いったい何が背景なのでしょうか。今回は,日本生産性本部という団体が「働く人の意識調査」という調査名でテレワークの実施状況に関する定点調査を行っている資料を発見したので,同調査の結果をもとに考察してみたいと思います。
まず,テレワーク実施率の推移をみてみましょう(下図)。直近は1月12~13日にアンケートを実施したとのことで,2回目の緊急事態宣言を踏まえた動向になっているといえるでしょう。一目瞭然ですが緊急事態宣言を受けてテレワーク率が大きく上昇したということはなさそうです。むしろ1回目の緊急事態宣言よりも実施率は低下しています。通勤する姿が減らないのも頷けます。
この調査結果をみる限り,テレワークが日本社会に定着したというには時期尚早でしょう。背景には,日本の企業文化などが影響しているのかもしれません。しかしながら,テレワークによる生産性向上が期待されるのもまた事実です。次のグラフをみてみましょう。
このグラフは,在宅で勤務したことで効率が上がった人の割合から下がったと回答した人の割合を引いたもの(一種のDI)です。アンケート結果をもとにブログの筆者が作成してみました。これをみると,在宅勤務で効率が上がった人の割合が徐々に高まっていることがわかります。在宅勤務を続けている人々のなかでは,在宅勤務に慣れることで,仕事の効率が上がってきているという見方もできるのではないでしょうか。
こうした生産性の向上が在宅勤務できる人が全員在宅勤務になったことでさらにもたらされるのかははっきりとしません。あるところで生産性が逓減する可能性も否定できません。とはいえ,少なくとも,長時間の通勤時間を仕事や家事あるいは副業に振り向けられることを考えただけでも,そのメリットは小さくないといえます。今の日本企業や社会には,生産性が最適になるポイントを見出していくことが求められているのではないでしょうか。
統計データで2020年を振り返る(鉱工業生産指数編)
あけましておめでとうございます。
2020年は経済指標の面でも激動の1年となりました。経済指標のなかでは生産に関する指標は回復をしているといわれています。今回は日本の鉱工業生産指数を用いて,2020年を振り返ってみたいと思います。
手始めに鉱工業生産指数の長期的な動きを振り返ってみましょう(図1)。2020年入り後は5月にボトムをつけたのち回復を続けてきましたが,直近の2020年11月は,10月から横ばいとなりました。また,予測指数によると,12月は減少する可能性が高いとのことです。緊急事態宣言が解除されて以降,企業の生産活動は消費などと比べて回復が早いといわれてきましたが,このところは回復しているとはいえ,夏頃にみられた急速なものとは異なっているようです。むしろ,2018年後半からみられている減少傾向のトレンドに戻りつつある,とみることも可能かもしれません。
このように,このところの鉱工業生産指数はCOVID-19が広がる前の水準を上回って回復しているとはいえなさそうです。こうした点をよりわかりやすく確認するべく,感染が拡大する前である2019年の平均を100として比較してみたのが図2となります。
この図をみると,日本の主力産業である自動車工業が,5月以降,力強く回復している姿が確認できます。5~7月にみられたような急回復はさすがに10~11月にはみられていませんが,2019年の水準に戻りつつあるといえるでしょう。ただし,先行きについては,世界的な需要をはじめさまざまな要因が作用するとみられるので,さらなる牽引力として期待できるかどうかは定かではありません。
ところで,自動車工業以外の動きはどうなっているのでしょうか。図2と同じ方法で基準化をして,COVID-19前の水準を超えている業種がないかと確認してみたのが,図3となります。11月の時点で100を超えていたのは2業種でした。
まず,ひとつめの電子部品・デバイス工業は,夏場以降増加を続けています。より細かい品目をみると,集積回路など,スマートフォンといったITに関連しそうな品目が増加しています。こうしたトレンドは,COVID-19によって世界がデジタル化していくという話を最近よく耳にすることからすると,今後も続く可能性があります。
もうひとつ100を超えている汎用機械工業をみてみましょう。細かい品目の動きを調べてみると,11月はボイラ・原動機の大幅上昇が寄与しました。また,10月の上昇に寄与した運搬装置は11月の上昇には寄与していません。このように,特定の品目における上昇が,結果としてこのところの指数増加につながっているとみることができます。もしかすると,こうした品目における増加になにか背景があるのかもしれませんが,筆者は今のところ見いだせていません。
ここまで鉱工業生産指数を使って2020年を振り返ってみました。国内の生産活動は,緊急事態宣言解除後,自動車工業の急回復に支えられてきましたが,このところは電子部品・デバイス工業など別の業種にバトンタッチしつつあるのかもしれません。2021年の生産がどういう道をたどるかは分かりかねますが,日本の基幹産業である自動車工業や関連する産業の推移とともに,グローバルなデジタル化に対する需要や設備投資の動向がどうなっていくのかが鍵になるといえそうです。
【書評】経済指標のウソ(ダイヤモンド社、2017年)
景気には山谷や循環があり、GDPや失業率によってわれわれがいま循環のどこにいるかが明らかとなる。こうした世界の見方に我々は慣れきっているが、実は数十年しか検証されていない経験則に過ぎないものだとしたら…。
では、GDPや失業率はどのような歴史を経て誰もが注目するような存在になったのだろうか。今回紹介する『経済指標のウソ─世界を動かす数字のデタラメな真実─』は、主要統計の歴史を紐解くことで導いてくれる。なお、本書のタイトルはやや挑発的であるが、原題は『The LEADING INDICATORS -A Short History of the Numbers That Rule Our World-』と実に冷静なものとなっている。
歴史を振り返ると、統計は統治と密接な関係にあることがわかる。例えば、ノルマンディー公ウィリアムの「ドゥームズデー・ブック」はグレート・ブリテンの実態を浮き彫りにした国勢調査のようなものであった。また、初期の合衆国憲法には、(自由人以外の者は5分の3とするなど奴隷制にかかる問題をはらんでいるが)国勢調査を10年ごとに行う旨が定められていた。国力の源泉である農業や貿易に関するデータについても、統治者が自国の国力を知るべく、充実が図られていった。
20世紀に入ると、統計は政治問題にいっそう翻弄されることとなる。まずは失業率をめぐる歴史に目を向けてみよう。第一次大戦後の混乱やその後の世界恐慌では、失業に関するデータが不十分であることが浮き彫りになるとともに、失業率統計は政権の命運をも左右することとなった。「失業者」は産業革命を経て登場した比較的新しい概念であり、一貫したデータは言うまでもなく蓄積されていなかった。まさに「裸眼だけを頼りに嵐の中を飛ぶ飛行機」の様相を呈していた。当時の大統領フーヴァーは、BLSに雇用状況を毎週調査させることを決定し、ある週のデータのいくつかが好転していることをもって実際とは逆行する判断を下したことがさらなる悪化を招いたとされる。不信感を募らせた議会は1930年に「雇用の数字と変動」を調査する権限をBLSに付与した。失業者数を把握することが重要であることが政治の世界で認識されるまでに時間を要さなかったが、失業者─雇用されていない状態─を把握するのは容易ではなかった。1950年代になってようやく現在のかたちとなった。
1970年代にインフレが政治問題となると、今度は物価統計が論争の的となる。物価は社会保険給付の前提であるとともに、労働争議において労働者は物価上昇を根拠に賃上げを要求する。そのため物価統計は極めて重要な存在となるが、実のところ、物価指数は根本的な「むずかしさ」を内包している。長期間にわたって「同一商品」の価格を計測することはほぼ困難である。例えば、50年前と現在の自動車はまったく異なる。そのため、こうした差を調整するヘドニックアプローチと呼ばれる手法が今日では広く用いられている。
GDPも政治とともに歩んできた。国民所得勘定という概念は著名な経済学者であるクズネッツによって体系化された比較的新しい概念であるにもかかわらず、財政出動によるケインズ政策の効果や国力を主張したい人々によって、今日のような信奉の対象となった。最近だと、2000年代のグローバル金融危機で注目を浴びた。当時のオバマ政権は景気刺激策として「2009年アメリカ復興・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act of 2009)」を制定するにあたり、財政出動の規模はGDPギャップを推計することで決定した。この政策は想定通りの雇用を創出したとはされていないが、GDPギャップの前提である潜在GDPや潜在失業率を計算することの困難さもその一因として指摘されている。
このように失業率、CPI、GDPと主要な経済指標を振り返ると、我々が思っているほど全体を包括的に表現できていないことがわかる。本書では、iPhoneの事例を一例として挙げている。貿易統計では、「最終的かつ実質的な変更が行われた地」を原産地とするルールが昔から採用されている。この原則に基づくとiPhoneは中国製であり、iPhoneの生む付加価値の多くは中国に帰属することとなる(米国の貿易赤字を増やす方向に作用する)。換言すれば、iPhoneを生み出したのは米国であるにも関わらず、売れれば売れるほどGDPは減少するということだ。グローバルサプライチェーンによる物の動きは、既存の貿易統計やGDPでは必ずしもうまく把握できないのである。同じことはサービス消費やSNSによる価値の算出についてもあてはまる。
つまるところ、それでもGDPを信じますか?というのが筆者からの問いかけである。指標は起こりうる多様な結果を示唆するにすぎず、未来を予言することはできない。それぞれの指標にはそれぞれの問題点を抱えており、ひとつの指標だけをみればよいということは決してない。そもそもGDPがどれだけ企業や個人の行動の指針として実際に機能するか疑問であり、今後発展を遂げるビッグデータに期待すると本書では締めくくられている。
English in March
- To begin with, let me touch upon the history of our company.
- Soy beans could be an idial substitute for meat.→substituteは人にも用いることがある。
- I'll get to that point in a few minutes.
- Perhaps, we can talk about it after the presentation.→perhapsをつけることで「~するとよいかもしれない」と表現を柔らかくする。
- dice・・・賽の目に切る(動詞)
- beaten egg・・・溶き卵
- heat-resistant glass・・・耐熱ガラス
- quiche・・・キッシュ
- recommend・・・to~という用法はない。個人的にというときにはpersonallyをつける。
- It's up to the management to decide the next step.
- retract an accusation・・・告訴を取り下げる
- push one's way through the undergrowth→藪の中をすすむ。undergrowthは藪の意味。
- We are guided by our principle of contributing to local communities.→be guided byで~に従っての意味。
- With the Chinese economy slowing down sales are expected to level off soon.→level offは横ばい,peak outは下降に転じる,bottom outは上昇に転じる。
- 減速するはslow downやlose momentum。
- We expect to receive a full refund for the unpurchased items within seven working days, as stipulated in our contract.
- preemption:専占…上位の行政機関の法が下位の行政単位の法を排除すること。
- run the show・・・采配を振るう
- one's capricious behavior・・・気まぐれなふるまい
- thread the needle・・・針に糸を通す
- issue stringent regulation・・・厳しい規制を設ける
- raise taxes at the pump・・・ガソリン税を引き上げる。at the pumpはat the gas stationのくだけた言い方、
- undermine・・・~の土台を壊す
- unwise decision・・・愚かな決定
- protracted bargaining・・・長引く交渉
2月の英語表現
- anxiousはこれから起きること(将来に対する)不安をさす。例えばHe was anxious about whether or not he will be promoted.
- 表面上は…だが実際には…だ。On the surface / in theory..., in practice / in realityといったバリエーションがある。
- assignはビジネスシーンではよくつかわれる。例えばI was assigned to head the next project.で「次のプロジェクトの統括を任された」など。
- 「名刺を切らさないほうがよいでしょう」はYou should make sure not to run out of business cards.
- 「服装について気にするに越したことはありません」はIt never hurts to be overdressed.という。ほかにはIt never hurts to try something new.で「新しいことに挑戦することは良いことだ」となる。
- 海外の人にも現地と同じやり方に従ってもらう必要があるということを伝える時にはYou must follow the same rule...というと厳しく聞こえる。そのため,「人」を主語にせず一般論として聞こえるように,The same rule holds true for foreign visitors.のように言う。
- 感謝するときはappreciateを使うがgladを使うとよりストレートに聞こえる。例えばI'm glad that you are prepared to follow the rules of the local culture.
- with great careをつけることで丁寧に接していることが伝わる。例えばI always try to talk to my staff with great care.でスタッフには言葉を選んで話すようにしている。
- 尊敬をえるの「得る」はearnを使うのが通常。例えばPaul began to earn the respect of his subordinates.
- 「努力をすればちゃんと取り合ってくれる」はIf you show some effort you will be taken seriously.
- 「日本のビジネスマナーは当地よりは少なくとも最初の段階ではフォーマルなものです」はManners in Japan are a bit more formal than they are here, at least in the initial stage.
- 「続けてください」はGo on.
- 「ご意見のある方はいますか」はDoes anyone have anything to add?という。
- 「これから質問の時間に入ります」はThe floor is now opened to questions.
- 相手の意見を否定するときは後半部分は肯定表現にする。I'm not sure if that's a good idea.とかI don't think this proposal is acceptable.など。
- 「最後までしゃべらせてください」はLet me finish my sentence.
- 「顧客層を広げる」はdiversify our customer baseという。
- The committee members come from a variety of backgrounds.で「委員会は多様なバックグラウンドをもつ人からなる」となる。
- 「プロジェクトの現状を報告する」はupdate / share the current status of the projectとなる。
- 議論の的を絞る際にはWhat do you think is the key?という。Howは使わない。
- holistic=包括的な/全体的な
- spoeadic=散発的な
- proliferation=激増
- disproportionate=不釣り合いな
- corroborate=確証する。There's nothing to corroborate your storyで「君の話を裏付けるものはなにもない。」となる。
- faultのほうが一般的だがshortcoming(s)を「短所」の意味で用いることも。例えばmake up for one's shortcomingsで「短所を補う」となる。
- 「善はいずれ勝つ」はGood will prevail.
- 「こちらは前菜になります」はHere comes the starter.
- deep fried=油の入った鍋で揚げたもの。fried riceでチャーハン。
- crispy touch=しゃきしゃきした歯ざわり
- rich chocolate cake=濃厚なチョコレートケーキ
- totally new=斬新な
- 「お墨付きを得た」=We have a ringing endorcement / stamp of approval.
- 「著名なゲストをお呼びしています」=We have a prominent guest today.
- 「率直なご意見をお聞かせください」=We would like to hear your frank / honest opinion.